
DAY4 + Open TALK2 Prototype Junkie
Creative-LAB DAY4 + Open TALK2 を10/11に実施しました。
前半のOpen TALKでは、「Prototype Junkie」というタイトルで、GOOD DESIGN NEW HOPE AWARDを2024年に受賞された中川優奈さんと2022・2023年に受賞された加藤優さんにお話しいただきました。後半には、レクチャラーを交えて、ラボ参加者のプロトタイプレビューを行いました。
本稿では、前半Open TALKの内容を一部記します。
中川さんレクチャー
胡散臭いオールドタイプを打ち破りたい
建築・デザイン系の大学院2年、ASIBA Incubation Program 2期生でもある中川優奈さん。 彼女の卒業制作のスタートは、いわゆる”王道”への違和感でした。過疎地域に施設を建てて地元と観光客をつなぐ、環境問題のために緑化建築を提案する。そういった「社会問題を掲げてそれを解決する建築」という卒業制作のオールドタイプが、どうしても胸に響かなかったそうです。 「絶対そんなんで解決しないだろうって。そういう卒業制作の定番を打ち破るために何を作ろうって考えたことが、私の始まりでした」
ファーストプロトタイピング──自分に問いかける
中川さんは、この「問いを立てて自分のやりたいことを探るプロセス」を、最初のプロトタイピングだったと振り返ります。 そこで彼女が大切にしたのは2つのこと。
- 定番や当たり前に惑わされず、心の底からやりたいことをやる
- 正解や他人からの評価を気にしすぎない
「毎週、教授に『お前が何をしたいのかさっぱりわからない』って罵倒されていました。でも、自分の好きなことをやろうっていう信念は曲げませんでした」 彼女が見つけた答えは、意外な場所に。 トイレの個室、不法投棄されたソファ、そんな「誰にも邪魔されない居心地のいいひとりの場所」。 そういった「曖昧な秘密基地」のような空間が、新宿の街に必要なものだと気づいたそうです。 「自分の家の隣の空き地に突然、不法投棄のソファーが現れたんです。悪いものだし、荒れ果てた空き地も良いものではない。でも、その二つの掛け合わせで、なんだか曖昧な秘密基地みたいな空間が生まれていました」
セカンドプロトタイピング──本当に作ってみる
卒業制作では図面やパースで表現するにとどまった彼女の提案。大学院に進学して最初にトライしたのが「本当に作ってみる」ことでした。 制作したゴミ箱型のシェルターを実際に新宿の街中で被ってみると、意外と認識されず、なじんだそうです。 「これはやっぱり、作っただけじゃなくて、本当に使ってみてやっと気づいたことでした。一旦作ってみて、ちょっとだめかもと思っても、実際に使ってみるっていうのも大事なプロトタイピングだったと感じています」
加藤さんレクチャー
個人的な不満から始まったプロジェクト
加藤さんのお話は、より技術的なものでした。彼は情報系のバックグラウンドを持ちながら、建築、ファッション、そしてプロダクトデザインへと活動の幅を広げてきました。 「僕はこの世にないものに対して実際に作ったらどうなるのかってのがすごく気になっていて。そういった衝動で創作をしている人です」 そんな加藤さんは、婚約指輪を作りに行ったとき、カスタムの幅が少なく、納期が5ヶ月もかかることに疑問を感じたそうです。 そこから始まった「清澄製銀」というプロジェクト。銀粘土という素材と3Dプリンターを組み合わせ、iPadで描いた線が指輪になるという体験を作り上げました。
8ヶ月間の試行錯誤
開発には8ヶ月かかりました。デザインシステム、3Dプリンターの改造、素材研究、すべてを二人でやり遂げました。 「最初は銀粘土も見つかってなくて、プラスチック、レジン、紙粘土、陶芸用粘土、錫とか、いろいろ試しました」 3Dプリンターも、指輪用に特化した小型のものを自作しました。既存の粘土用3Dプリンターでは一回の試作に30万円もかかってしまうからです。


作り続けられるのは「好き」があるから
加藤さんの共同創業者は、粘土が好きな人でした。父親がクレイモデラー(車の模型を粘土で作る職人)で、子供の頃から粘土に親しんでいました。加藤さん自身も3Dプリンターで出来上がる造形物に対しての熱意があり、「清澄製銀」はそんな二人ともが夢中になれるプロジェクトでした。 「ここで何が言いたいかっていうと、手を動かし続けるには熱意を持てるものが必要だってことです。市場があるよとか、プレゼンが綺麗にできるからって理由では、熱意は続かない」 ここで紹介された、彼が好きな言葉。 「本気見せるならプロトタイプを作れ」 「何回も綺麗なプレゼンをするよりも、ものがある方が説得力がある。プレゼンで伝わったなって思うと、満足しちゃうことも多い。だから僕は、飲み会の帰り道に絶対プログラムを書くってことをやっていました」
ディスカッション──作り始める勇気
レクチャーの後、参加者を巻き込んだディスカッションを行いました。 「どうやって要素を絞り込むんですか?」 中川さん:「考える時間を長くとるタイプで、場合分けをめちゃくちゃ考えて、ベストを見つけてから動きます。」 加藤さん:「僕は慣れてない段階だったら一旦全部やります。痛い目を見るのも大事だと思って。どんどん作りまくることで、考えずにこれがメインの主張だとか、プロトタイプとして成立するみたいなのを会得していったタイプです」 「ゴールはあるんですか?」 中川さん:「私は目指してるものは何もないです。ひたすら目の前でやりたいなって思ってることをやってます」 加藤さん:「僕もあんまり目標とかはないかもしれない。その都度全力でできる環境は作るってのはやってるけど」 「好きじゃなかったらどうやってピボットするんですか?」 中川さんは卒業制作で、最初は「宗教ごとにおける私生活の違い」をテーマにしていましたが、没にして「逃げ場」というテーマに移ったそうです。 中川さん:「だめだって思った瞬間に、すぐに別のことを考え始めました。これ以上ないかもしれないって思った瞬間が来た気がします」 加藤さんは複数のプロジェクトを同時に走らせるタイプとのこと。 加藤さん:「まちに擬態したいAIというプロジェクトは、コンペで優秀賞をもらったけど一年以上続かないなって思ってやめました。仕組みを一個作ってそれを広げてくより、プロダクトをどんどん作っていく方が気質として向いてたって分かったから」

外に出すことの価値
話の中で何度も強調されたのが、「外に出す」ことの重要性でした。 中川さん:「一旦満足いくまでやってみて、他の人に見せてみて、反応を伺うまではやってみます。自分が好きだったらそれでいいと思います」 加藤さん:「グッドデザインニューホープで知り合った友達。ベクトル違いでも熱量が同じぐらいだと熱狂できる仲間が作れます。そういう人が増えると安心して挑戦ができます」 ただし、誰に見せるかが重要とのこと。 加藤さん:「マジレスしてやる気を下げてくる系の人には絶対相談しません。能力があってもモチベーションが下がったらもう終わりだから」
一人で向き合う時間の大切さ
一方で、作り始めるときには「情報を遮断する」ことも必要だと加藤さんは言います。 加藤さん:「自分と向き合うのが大事です。コミュニティに所属すると、どうやって発表したら見え方がいいかという考えに左右されると思います。それをいかにまずは排除して、純粋に心を打つものは何か?を見つけます」 「書き出すこともするし、一回遮断もします。人に言わない。言っちゃうと、見栄とかも出てきて難しくなります」 中川さん:「自分のやりたいことやりたいし、周りはみんなすごいと思ってるけど、違うことを目指してる人に話をしても、いいアドバイスはもらえません。自分がぶれそうになるきっかけが増えるだけです」
プロに相談するタイミング
では、専門家の力を借りるのはいつがいいのでしょうか? 加藤さん:「プロには初期フェーズでは絶対話しません。プロの方は正解を出してくれるけど、それが自分の正解であるとは限りません。」 「具体的な課題ベースになるまでは声をかけません。あえて遮断していることも多いです」 実際、加藤さんは自分でミシンを買って服の縫い方を学び、3Dプリンターを改造し、素材を試し続けたそうです。その「下積み」があって初めて、プロに相談する価値が生まれるとのこと。 加藤さん「一周回って遠回りでかっこいいみたいなところもあるかもしれません。自分のナレッジを自分で拡張していくんです」
作り続けることで見えてくるもの
セッションの最後、「闇雲に作り始めると、作ったことに満足しちゃうことがあるんです」という声が参加者からありました。 加藤さん:「作って満足するハードルをどんどん上げていくのが大事です。最初だったら作って満足でもいい。でも、それを続けていくと、満足じゃなくなる瞬間が来ます」 中川さん:「プロトタイピングしたり、とりあえずやってみるだけで次の話につながったり、新しい興味にも繋がります。ぜひ皆さんもちょっとダメかもと思っても、一旦作ってみてほしいです」
プロトタイプジャンキーになる。それは、完璧を目指すことではありません。作り続けること、試し続けることで、自分が本当にやりたいことを見つけていく旅です。 正解を気にせず、評価を恐れず、ただ作る。そして外に出してみる。熱量を持てる仲間を見つける。そしてまた作る。 その繰り返しの中で、本当のクリエイションが生まれるのかもしれません。
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