
見方を揺らす / Creative-LAB. 3期 DAY2 MEs Workshop & Mentoring
2026年1月24日(土)一般社団法人ASIBAのYOHJOH (Kameido)にて開催された Creative-LAB. 3rd DAY2 では、バーチャル空間を用いた MEs Workshop と、多様な専門性を持つメンター陣による メンタリング を行いました。

今回は、プログラム全体で共通していたのは、すぐに答えや完成形を求めるのではなく、アイデアを形にする手前の思考や対話に、丁寧に向き合う姿勢。発表や対話の場面では、考え込む時間と同時に、楽しそうな反応や笑い声もありました。
対象を観察し、視点をずらし、他者の問いによって考えを揺さぶられる。そうしたプロセスを通して、参加者それぞれが物事の見方や、アイデアの繋ぎ方を少しずつ増やしていきました。
MEs Workshop:ひとつの対象を、別の視点から見てみる
前半は、バーチャル空間「MEs」を使ったワークショップから始まりました。このワークショップのレクチャーは、MEsを開発するO株式会社代表でアーティストでもあるa春さんに担当いただきました。
https://note.com/o_mes/n/n8b9de36b4a44
参加者はまず、空間内に配置されたオブジェクトの中から、自分が気になるものを一つ選びます。トムソンガゼルの頭蓋骨、ブルーコーラル、モミジバフウの種──最初のワークは、これらの中から選んだひとつの対象を、複数の視点から観察してみることでした。

ここでは主に、次のような観点が提示されていました。
- 大きさを変えると、どう見え方が変わるか
- 時間の流れの中で、その対象はどう変化するか
- どんなシステムや環境の一部として存在しているか
対象そのものを「分析」するというより、見ている側の視点をずらし続けることに重きが置かれていました。

ワーク後の発表では、「小さく見ていたときは気づかなかった凹凸が、大きくすると別の意味を持って見えた」「時間軸で捉えると、主役がその対象だけではなくなる」といった気づきが、共有されていきました。

MEs Workshopは、アイデアをその場で形にするためのワークではなく、物事の見方を一度固定せず、揺らしながら観察し続けるための時間でした。
見方が変わると、問いの立ち方が変わる
ワークショップの中で印象的だったのは、対象そのものよりも、参加者の問いが少しずつ変化していったこと。ワークの序盤では、「この形が面白い」「直感的に惹かれた」といった、感覚的な入り口から話し始める参加者が多く見られました。しかし、スケールや時間、システムといった観点を行き来するうちに、問いの向きが次第に変わっていきます。
たとえば、単純に「何に使えるだろうか」という問いではなく、「人がこの中に入ったら、どんな感覚になるだろうか」「この生物が捕食され、腐敗されるときには、別のアクターが重要になってくるのでは」といったように、対象の捉え方そのものが広がっていきました。

このように、MEs Workshopでは、アイデアを一つに絞り込む前段階として、物事の見方を増やし、それに伴って問いの立ち方が変わっていく過程が丁寧に扱われていました。この「見方を一度固定せず、揺らし続ける」という土壌が、後半のメンタリングにも引き継がれ、単なる正解探しではない、より深い対話へとつながりました。
メンタリング:アイデアを評価せず、広げる対話
後半のメンタリングは、研究・アート・実践の異なる立場のメンターが同席し、少人数に分かれて行われました。メンターには、弊社代表の二瓶に加え、露口啓太さん、平岡美由紀さん、今和泉隆行(地理人)さんにご協力いただきました。メンターの方々は、すぐに評価や方向性を示すのではなく、問いを投げ返しながら、視点をずらしていく関わり方をされていました。

たとえば、ある参加者の、「都市の中に森の機能を実装」しようとするプロジェクトに対し、今和泉隆行(地理人)さんは「(森を感じさせるのに)必ずしも樹木である必要はない、ということ?」という問いを投げかけました。これは、前半のワークで培った「対象のシステムや本質を見つめ、既存の概念から視点をずらす」という姿勢が、具体的なプロジェクトの議論へと接続された場面でもありました。
先の問いに対し、その参加者は「森の本質は、人間がコントロールできない『わからないもの(カオス)』がある状態」と定義しました。
すると、今和泉さんはすぐに「であれば、都市におけるカオスである『工事現場』や『飲み屋街』も、既存の植物の概念に縛られない『森的要素』と言えるのではないか」と視点を大きく広げていきました。
また、「今はまだ決めなくていい」「無理にまとめなくていい」といった言葉が、対話の中で共有されていました。
これは、考えることや試すことの途中段階を、そのまま扱うための姿勢の表れでした。

対話は一方向ではなく、参加者の言葉に対して、別の参加者やメンターが反応し、そこからさらに話が広がっていく形で進みました。そのため、一人で考えているときには見えにくかった前提や、固定されていた視点に気づき、新しい問いが出てくる参加者もいました。ここで行われていたメンタリングは、アイデアを「良い・悪い」で判断するのではなく、どこに可能性がありそうか、どの方向に広げられそうかを、対話を通して探っていく時間でした。
アイデアを「形にする前」の時間を、大切にするということ
プログラムを通して見えてきたのは、アイデアをすぐに形にすることよりも、その手前にある思考や対話に、しっかりと時間をかける姿勢。MEs Workshopでは、一つの対象をさまざまな視点で観察し、見方を固定しないことで、物事の捉え方そのものが少しずつ広がっていきました。続くメンタリングでは、そうした状態が前提として引き継がれていました。アイデアを評価したり結論を出したりするのではなく、どこに可能性がありそうか、どんな方向に広げられそうかを、対話を通して探っていきました。一見、この進み方は遅く感じられるかもしれません。しかし、参加者の言葉に耳を傾けると、この「あえて立ち止まる時間」の切実な必要性が見えてきます。
たとえば、
・政治や社会の意思決定のスピード感に疑問を持ち、「効率」や「正解」だけで物事が進むことに違和感を抱いてる。
・創作活動においてフィードバックが得られず、「孤独な創作」をどうにかして解消したいと願っている。
そんな声も、この日、実際に聞こえてきました。彼らの言葉からは、個人の悩みにとどまらず、効率が優先され、孤独が広がる現代社会が抱える課題も垣間見えました。
「まとめる前」「決める前」の段階を、他者の問いを借りながら丁寧に扱うこと。それは、現代社会において、むしろ既存の枠組みを突破するための強みであり、希少な歩み方だと言えます。
Creative-LAB.では、アウトプットの形や成果の出し方を一つに定めていません。プロトタイプや作品として形にすることもあれば、対話や実験、問いの更新そのものが次につながる場合もあります。どの段階にあっても、一度受け止め、そこからどう広げていけるかを考えていくことが、プログラム全体を通した姿勢です。

MEs Workshop & Mentoringは、アイデアを持っているが、まだ形にしきれていない人、これから何かを始めようとしている人にとって、「今どこに時間を使うべきか」を見つめ直すきっかけになる一日でもありました。アイデアを形にする前の揺らぎを含んだ思考や対話を、あえて立ち止まって扱うこと。その積み重ねが、Creative-LAB.の次のステップ、そして一人ひとりの確かな歩みへとつながっていきます。
Related Articles
Creative-LAB. 3期 プログラムレポート #4
妄想の解像度を上げる ラピッドプロトタイピング / Creative LAB. DAY4 Prototyping Workshop + Mentoring
Creative-LAB. 3期 プログラムレポート #3
好きを追い続けた先で、名もなき生き方をつくる。 / Creative LAB. DAY3 Open Lecture
Creative-LAB. 3期 プログラムレポート #1
つくることと生きることの交差点をつくる / TSG Creative-LAB. 3期 DAY1 ラボ合同キックオフ

Creative-LAB. 3期 プログラムレポート #4
妄想の解像度を上げる ラピッドプロトタイピング / Creative LAB. DAY4 Prototyping Workshop + Mentoring

Creative-LAB. 3期 プログラムレポート #3
好きを追い続けた先で、名もなき生き方をつくる。 / Creative LAB. DAY3 Open Lecture
Creative-LAB. 3期 プログラムレポート #1