

「わたしらしい"場"をデザインする」——Community Design-LAB. 合同ミートアップ レポート
2026年9月27日、Tokyo Innovation Base(TIB)にて、「Community Design-LAB.」(以下、CDL)の初回となる合同ミートアップが開催された。
CDLは、東京都主催のスタートアップ支援事業「TOKYO STARTUP GATEWAY(TSG)」の枠組みのもと、NPO法人ETIC.が運営事務局を、一般社団法人ASIBAがコンテンツパートナーを務める3ヶ月間のプログラムだ。
掲げられたテーマは、
わたしらしい"場"をデザインする。
〜「やりたい」を起点に、人が集まる理由をつくる場づくり実験室〜
本レポートでは、プログラムの全体像や背景に触れながら、熱気と工夫に満ちた初日の様子をお届けする。
Community Design-LAB.とは
CDLは、単にコミュニティの集客テクニックや運営ノウハウを座学で学ぶ場ではない。
「自分の個人的な関心や『やりたい』という熱源をどう言葉にし、他者を巻き込み、持続可能な場へと育てていくか」を追求する、実践型の“場づくりの実験室”だ。
プログラムの最大の特徴は、3ヶ月の期間中に参加者自身がイベントや企画を実際に立ち上げ、人を招き、試行錯誤を重ねる点にある。企画パートナーであるASIBAが培ってきた場づくりの知見や実践者たちのメンタリングを受けながら、インプットとアウトプットを繰り返していく。
3ヶ月のロードマップ:「見立てる・ひらく・ゆずる」
CDLは、コミュニティが立ち上がり育っていくプロセスを「場を『見立てる』『ひらく』『ゆずる』」の3つのフェーズに分けて設計している。
- Phase 1:場を見立てる(9月〜10月上旬)
- 自分の「やりたい」を見つめ直し、場としての問いやコンセプトを尖らせる。
- 9/27:LAB.合同ミートアップ(@TIB)
- 10/11:ゼミ#1「コミュニティはデザインできるのか?」(@SHIMOKITA COLLEGE/フィールドワーク)
- 実践課題:最初のイベント企画を立てる
- Phase 2:場をひらく(10月中旬〜11月上旬)
- 人を集め、実際に場を開いてみる。
- 10/25:ゼミ#2「良いコミュニティができるイベントってどんなイベント?」
- 実践課題:実際にイベントを開催する(小さな規模でのプロトタイピング)
- Phase 3:場をゆずる(11月中旬〜12月)
- 熱量を広げ、持続可能な関係性や自律的な運営を模索する。
- 11/8:1Dayキャンプ「やってみて得たことを、次に生かす」(中間報告&メンタリング)
- 11/22:ゼミ#3「この場を、誰と、どうやって続けるのか?」
- 実践課題:改善をもとにもう一度イベントを実行する
- 12/13:LAB.最終成果報告会・デモデイ(@TIB)
今回の合同ミートアップは、この3ヶ月のプログラムのスタート地点となる集まりだ。

初回ミートアップの狙い:「迎えられる体験」そのものを教材にする
この日、会場のTIBには選考を経て集まった参加者が顔を揃えた。
初回の目的は、プログラムのオリエンテーションだけではない。目指したのは、参加者ひとりひとりが「次に話せる仲間がいる」と感じて帰れる関係性をつくること。そして何より、この場に迎え入れられる体験そのものを、後に自分が場をつくる際の「最初の教材」として設計することだった。
参加者として歓迎される体験を味わいながら、同時に「自分はなぜ今、安心できたのか」「どんな仕掛けがあったから話しやすかったのか」をつくり手の視点で観察する。この二重の学びが、初日の至るところに散りばめられていた。
安心して参加できる場づくり:観客席・ベンチ・フィールド
初めての場に参加するときは、誰しも「どんな人がいるのだろう」「自分は馴染めるだろうか」といった不安を感じるものだ。
午後の3時間では、Discordの使い方やプログラム紹介、ウェルカムバッグの配布、グランドルールの確認、そして参加者同士の対話を行った。
初めて集まる参加者が安心して過ごせるよう、「相手の経験や価値観を決めつけず、まず耳を傾ける」「失敗や未完成なアイデアを、人格や能力の評価につなげない」といった約束事(グランドルール)を全員で共有した。
また、場への関わり方に優劣はないことも伝えた。
- 観客席:まずは様子をじっくり見て知る
- ベンチ:共感やリアクションで場を支える
- フィールド:自ら企画を立ち上げ、実践する
誰もが常に前のめりでいる必要はなく、自分の状況や気持ちに合わせて立ち位置を自由に行き来できる。この関わり方の余白が、心理的安全性の土台となる。


歓迎の気持ちを形にする:ウェルカムバッグの仕掛け
会場で手渡された「ウェルカムバッグ」も、場への入り口をスムーズにするための大切な仕掛けのひとつだ。言葉やスライドの説明だけでなく、手元に残る物を通して歓迎の気持ちを伝えたいと考えた。
準備段階では、ASIBAやCommunity Design-LAB.のステッカーや付箋、名札(裏面に参加することでコンプリートできるスタンプカード付き)、ひと匙の遊び心として飴玉、そして参加者の写真と一言メッセージをまとめたシートなどをセットにした。特に、顔と名前を結びつける役割を果たすそのシートは、参加者同士が相手を知り、自然に声をかけ合うきっかけをつくるためのものだ。バッグの中身を考えることは、「何を配るか」だけでなく、「受け取った人が、次に誰とどんな関わりを持てるか」をデザインすることでもある。
ここには、「受け取る側」と「つくり手」の2つの視点がある。
受け取る側として何が嬉しく、何があると安心できたかを感じること。そして一歩引いて、「なぜそのアイテムが用意され、どんなコミュニケーションを生もうとしているのか」を読み解くこと。ウェルカムバッグは単なる記念品ではなく、誰かを迎えるための工夫を学ぶ具体例として用意した。

「50 Onboarding list」で、場に馴染むプロセスを可視化する
当日の仕掛けを、事前準備から次回のゼミへと持続的につなぐのが「50 Onboarding list」だ。
オンボーディングとは、新しく参加した人が場を知り、関係性を築き、自分らしく関われるようになるまでのプロセスを支えること。CDLでは、この過程を50の具体的なアクションに分解して示した。
リストは、「事前準備」「9月27日の当日」「9月28日〜10月10日の期間」「10月11日のゼミ#1」という4つのステップで構成されている。Discordのプロフィール設定や通知の調整、自己紹介の投稿、他の人の投稿へのリアクションといった小さなアクションから、バディとの対話、コーヒーチャットでの交流、ゼミ#1での振り返りまで。場に入っていくプロセスを一度きりのイベントで終わらせず、日々の小さな接点を重ねる流れとして捉えている。
このリストは、すべてをこなすためのノルマではない。「必須」「推奨」「任意」の区分を設け、自分のペースで進められるように設計されている。目的はチェックを埋めることではなく、「次に何をすればよいか」「困ったときに誰に相談できるか」がわかり、自分に合った参加の仕方を見つけられることだ。
同時に、このリスト自体がオンボーディングの設計を学ぶ教材にもなっている。例えば、誰かの投稿に最初のリアクションをつけることが、相手の発信しやすさにどう影響するか。写真係やタイムキーパーなどの役割を持つことが、参加者から「場を共につくる側」へ意識を変えるきっかけになるか。一つひとつの項目を実践しながら、それがどんな安心感を生み、どんな行動につながるのかを体感していく。

最初の相談相手をつくる「LABバディ制度」
参加者が一人で不安を抱え込まないよう、3人ひと組の「LABバディ制度」を用意した。
初回から10月11日のゼミ#1までの約2週間、最も身近に相談できる関係をつくっていく。この日は互いの自己紹介や関心を共有し、次回開催までに対話・おしゃべり会をしてくる(私たちは「コーヒーチャット」と呼んでいる)ことを宿題とし、やり取りにつながるきっかけをつくった。


コミュニティを解剖する:分類レクチャーとワークショップ
後半のワークに先立ち、本ラボのコンテンツディレクターを務める坂元(コミュニティデザイナー)によるミニレクチャーが行われた。
「コミュニティ」という言葉は多義的で、人によって思い描く姿が大きく異なる。そこで、坂元が日々コミュニティデザイナーとしてリサーチ・分析を重ね、開発してきた知見やフレームワークの一部が紹介された。
レクチャーでは、コミュニティが「何を中心に集まるのか」を読み解く4つの軸が提示された。
- 関心(Interest):共通の趣味や情熱を中心に集まる場
- 場所(Place):特定の地域や空間に根ざして集まる場
- 行動(Action):目的や社会的な課題解決に向けて共に行動する場
- 実践(Practice):専門性やスキルの学び合い・探求を通じて高め合う場
さらに、「体験の受け手(消費)か、共につくる側(共創)か」「オンライン完結か、リアルな場所に根ざすか」といった軸を組み合わせることで、それぞれの場が持つ力学や必要な設計の違いが整理された。

このレクチャーで視点を広げたあと、参加者は身近なコミュニティの思い出や自らの関心を振り返るワークへと移った。
「自分が心地よいと感じた場はどのタイプだったか」「これから立ち上げたい場は、誰とどんな関わり方を育みたいのか」。バディ同士でそれぞれの経験やアイデアを共有し合うことで、自分が場づくりで大切にしたい軸や、この3ヶ月で挑戦したい実験の輪郭がより鮮明になっていった。


オンボーディングを体験しながら、オンボーディングを学ぶ
CDL序盤では、単にコミュニティづくりの理論やノウハウを講義で学ぶのではなく、プログラム全体を通して「参加者自身が受けるオンボーディングの体験そのもの」を最大の教材として設計している。自分がどのように迎えられ、どんな仕掛けによって安心感を覚え、最初の一歩を踏み出せたのか。その実体験こそが、自ら場をつくる際の最もリアルな学びとなる。
「どの瞬間に、ここにいていいと思えたか」
「何があったから、初めての相手に声をかけやすかったか」
「どこで迷い、どんな案内があれば進みやすかったか」
参加者の視点で感じた安心感や戸惑いをメタ認知(客観視)することで、それらはすべて「自分が将来、誰かを迎える場をつくるときに配慮すべきポイント」へと転換される。ウェルカムバッグも、バディ制度も、グラウンドルールも、すべてはその意図を読み解き活用するための生きた具体例だ。
これが、CDLが貫く「オンボーディングを体験しながら、オンボーディングを学ぶ」という設計思想だ。運営側の手法をただの「正解」として受け取るのではなく、うまくいった工夫も改善の余地も含めて捉え直し、自分の場づくりのヒントにしていく。「50 Onboarding list」にも、自身の体験をじっくり観察するための視点が組み込まれている。
この2つの視点は、参加者自身がイベントを企画・開催する「実験」に直結している。誰のための場かを考え、入りやすい入り口をつくり、実際に人を迎えてみる。そこで起きたことを振り返り、次の工夫につなげていく。
CDLは、知識を学んでから動くだけのプログラムではない。集まった場そのものを観察し、参加者と運営が一緒になって場をつくりながら学んでいく実験室(LAB)なのだ。
次回に向けて:10月11日、寮のコミュニティの現場へ
次回は10月11日(日)、下北沢の学寮「SHIMOKITA COLLEGE」で開催する。テーマは「コミュニティはデザインできるのか?」。ゲストにSHIMOKITA COLLEGEの事業責任者を務める原田遼太郎さんを迎え、施設内のフィールドワークを通して場の観察を行いながら、各自の場づくりを深めていく。
その後は、ゼミ#2、1Dayキャンプ、ゼミ#3を経て、12月13日の最終成果報告会へ。
迎える側と迎えられる側を行き来しながら、この3ヶ月のあいだにどんな「わたしらしい場」が立ち上がり、どんな人々の場が交差していくのか。参加者それぞれの実験と探究に期待したい。